鬼龍院花子の生涯/1982/Kiryuin Hanako’s life

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土佐高知の侠客 鬼龍院一家。正妻と愛人入り混じる家に養女でやってくる松恵

昭和15年、夏。京都・橋本遊廓で1人の娼妓が死んだ。
彼女は鬼龍院花子といい、遺体に歩み寄る女性は鬼龍院の養女だと言う。

大正7年、土佐高知。

子沢山の白井家に鬼龍院政五郎と妻がやってきて、男の子のひらくと12歳の松恵を養子にもらって行った。よそものの白井は商売のために自分の子供を差し出したが、次の日、ひらくは逃げ帰った。
鬼龍院の家は正妻のうた、舎弟たちに加え政五郎の愛人たちも同居しており、ここに養女の松恵も加わった。

闘犬で負けた末長平蔵は腹いせに兼松の犬をなぶり殺した。悔しさでいっぱいの兼松は鬼政に助けを求め、鬼政は平蔵の家に乗り込むが居留守を使われる。
手ぶらで帰れない鬼政は下働きのつるをさらっていった。

末長の兄弟分である三日月次郎に兼松を刺された鬼政は、高知の大物で土佐電鉄を所有する須田宇一に訴え出るが、痛み分けにしろという。
須田は末永と鬼政の間に入り中を取り持っていたため、鬼政はなかなか末長に手を出せず苦々しく思っていた。

政五郎の愛人に加わったつるが花子を産み、政五郎に変化が。愛娘の花子と養女の松恵。皮肉にも正反対の人物に育つ

つるは今まで鬼政と閨を共にすることを嫌がっていたが、ある日、松恵がつるを呼んだと嘘をつき、寝床に居座ったことをきっかけに、つるは妊娠。ついに鬼政に女の子が生まれる。
鬼政は初めての実子である花子を溺愛した。

県立第一女学校に合格した松恵は進学を懇願する。

月日は経ち、女学校で先生となった松恵。かたや花子は、勉学よりも化粧品が好きな世間知らずのわがままな娘に育った。

鬼政は須田から須田が筆頭株主である土佐電鉄のストの排除を頼まれる。
ストを推進する活動家の田辺恭介と殴り合いの末、自らを弱きを助ける侠客と称して活動に共感するが、須田はこれを許さず鬼政を出入り禁止とした。

申し開きに須田に会いにいくも、すでに須田は末長と手を結んでいた。

実直に生きる松恵と奔放にワガママに生きる花子の生き様

鬼政は田辺恭介を花子の婿にしたいと考えていた。
警官を叩いて勾留されていた田辺の差し入れに松恵を差し向ける。釈放後、放免祝いに欲しいものを聞くと、田辺は松恵を欲しいという。
思惑が外れ激怒した鬼政は、けじめとして田辺に指を詰めさせる。

また鬼政は松恵を自分の所有物だと言って憚らず、料亭に呼び出し手篭めにしようとするが、松恵に抵抗され諦める。

田辺との縁組に失敗した鬼政は山根組の若い衆、権藤哲男と花子の縁組を取り決める。兄弟の杯を交わす宴席の最中に、歌が腸チフスで倒れる。
隔離病院へ行く手続きをしろという医者を拒み、松恵が腸チフスに観戦しながらつきっきりで看病するも、歌は亡くなった。

昭和12年・冬。大阪。田辺のところへいって田辺の運動を手伝う松恵。

東京浅草で花子の婚約者、権藤が殺された。そして花子の母つるは自ら消息を断ち、越前の三国で女郎になった。

田辺との子供を流産した松恵は、田辺と高知へ戻った。
家を抜け出して夜店に行く花子を見つけてあとをつける田辺は、男に連れていかれる花子を見て刺殺されてしまう。

田辺の葬儀に赴いた松恵は田辺の父になじられるが、骨壷の骨を小箱に入れて持ち帰ろうとする。周りをとり囲まれた松恵は啖呵を切る。

ボロボロに荒れた鬼龍院の屋敷に松恵が帰ってきた。親子の情を確かめた松恵と鬼政。その後、鬼政は末長のところに花子を取り返しに行ったが、花子は一緒に帰らなかった。

その後自首した鬼政は2年後、網走の獄中で死んだ。

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