陽暉楼/1983/Geisha Momowaka’s Geisha sad story

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土佐随一の料亭「陽暉楼」を舞台に、薄幸の芸妓桃若の人生を描く

豊竹呂鶴(池上季実子)という女義太夫が大雪の中、何者かに刺された。
追手のものはすべて殺ったという太田勝造(緒形拳)の腕には赤ん坊(のちの桃若)が…ほどなく呂鶴は命を落とす。

20年後の昭和八年。陽暉楼は往来する客で盛況だ。

桃若(池上季実子)は陽暉楼一の芸妓であるが、女将のお袖(倍賞美津子)は芸が立つのを鼻にかけて客あしらいが悪いと不満な様子である。

桃若の父親は女衒が生業で、再婚した妻と盲目の息子がいる。

佐賀野井との出会いと桃若の弱点

土佐の財界人が集まる宴席で、桃若は南海銀行の御曹司の佐賀野井と出会う。年のとったお客が多いなかで佐賀野井は若い。
佐賀野井は桃若を気に入ったようである。

朋輩たちと好きな人や恋のことを話すにつけ、桃若は燃えるような恋をしたことがなく、この先自分が本当に人を好きになるのかと不安になる。

銀行協会の会長であり陽暉楼の太客である堀川も、周りから情が薄い、冷たいと言われ客との関係が長く続かない桃若を不憫に思っていた。

勝造の愛人 珠子と稲宗組が送り込む芸妓 丸子

勝造は大阪ミナミのカフェで女給をしていた時に出会った珠子(浅野温子)を陽暉楼に売りに来たが、お袖は親の借金を背負っている子でないと預かれないと断る。

身体を売るなら遊郭も同じと玉水遊郭の明月楼で働きはじめた珠子を、勝造の手下である秀次(風間杜夫)は見守るっていたが、初めての客から逃げ出した珠子を無理に明月楼へ連れ戻さなかった。

稲宗組の賭場にはかつて夫に売られた古川の妻、昌枝がいた。実はかつて手付金として渡した100円を持ち逃げし、その後丸子(佳那晃子)という名前で芸妓になっていたのだ。
鉄道の開通工事で土佐で莫大な金が動くと睨んだ大阪・稲宗組の組長(小池朝雄)は、豊富な資金力を持つ陽暉楼をなんとか自分の支配に置きたいと考えていた。その一歩として、丸子に陽暉楼の主人をたらしこみ、女将にしてやるとそそのかす。

桃若と珠子、ダンスホールでのキャットファイトと友情の芽生え

陽暉楼の客たちと向かったダンスホールで、陽暉楼の芸妓と玉水楼の女郎たちで争いが起きた。
茶良助(熊谷真実)が佐賀野井と踊っていたところ、珠子が横入りして一緒にチャールストンを踊るが、女郎ごときに芸妓のメンツをつぶされたと桃若は気に入らなかった。

化粧直しに入ったトイレで、とうとう桃若と珠子は感情をぶつけ合い、着物やかつらを引っ張り合う大喧嘩を繰り広げる。

着衣もかつらも乱れたまま佐賀野井に呼び出されたバーに行き、結ばれる。

桃若の妊娠

検査で桃若が妊娠していることがわかるが、医者に口止め料を払って内密にするように頼む。
立て続けに咳が出る桃若に、医者は一度診てもらったほうがよいと話す。

珠子は大阪に行くことになり、桃若に別れを告げる。ダンスホールでの取っ組み合いの大喧嘩を通して、二人は良い友人になっていた。

堀川と佐賀野井に捨てられ、病に蝕まれた身体で出産

やがて桃若の妊娠はお袖にばれ、堀川さんに知らせないといけないという。
桃若はおなかの子の父親は佐賀野井だとわかっていたので、子供の父親は堀川ではないというが、お袖は頬を叩き、そんなことをいうことは許さないと言う。

勝造は陽暉楼を守るため、陽暉楼の主人が賭場で作った借金を返し稲宗組との縁を切ったが、このことで稲宗組に命を狙われることになった。

佐賀野井は桃若に何も告げず、ヨーロッパ留学に行った。

妊娠していることが周知の事実になり、仲間の芸妓たちも子供を早く下したほうがいい、身の破滅をする恋はあきらめろ、世間も堀川もだまし続けるしかないと桃若を諭す。

自分の子供でなくても桃若の旦那としてすべて飲み込もうとした堀川に「生まれてくる子供にだけは嘘をつきたくない。この子は堀川の子供ではない」と言ってしまい、逆鱗に触れる。

堀川は陽暉楼にとって大切な客であるため、女将は桃若の代わりに胡遊をあてがうことにした。

桃若の肺病が進行、子供を残して息絶える

桃若は無事に女児を出産し、秀次と珠子は小料理屋を開店した。籍はまだ入れていないが、仲の良い様子に赤子を連れた桃若も顔がほころぶ。

温習会のけいこで、桃若と胡遊が舞の練習をしている時、とうとう桃若は血を吐いて倒れる。

入院した桃若に会いに来た珠子は子供のことを気に掛けるが、お袖が里子に出したという。
こんな身体で勝手に生んでからしかたないと言う桃若の話を、勝造が病室の外で聞いていた。

子供を返してほしいと金を差し出す勝造に、金さえ戻したら桃若のしたことが帳消しになるのかというお袖。
子供は桃若のほうから渡してきた、勘違いするなという女将。
桃若に代わる女を連れてくると軽々しく言う勝造に、桃若の代わりはいないし、もうこれで勝造との縁はおしまいだと言い去っていく。

面会謝絶の病室の外から窓越しに子供を会わせ、「絶対死んだらいかんちゃ」とはげますが、大量に血を吐いた桃若は佐賀野井の幻覚を見ながら息絶えた。

小料理屋おたまに来た勝造に珠子は桃若に何かあったことを察する。

稲宗組が勝造を狙って小料理屋に爆弾を投げ込み、かばった秀次が死んだ。

稲宗組への復讐と最期

珠子と勝造は高知を離れる船の上にいた。

満州に行くために下関から船に乗るから、駅舎で待ってろと言い、珠子のに一抹の不安がよぎる。勝造は稲宗組を襲撃し組長を撃つも、若い衆に刺されて命を落とした。

終電が終わった駅には珠子が待っていたが、とうとう勝造は戻ってこなかった。

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